2008年11月 の記事一覧

2008年11月17日 【第八十三福一丸】進水式の模様を日刊水産経済新聞で掲載

2008年11月19日

20081119sinsuisiki.jpg 【福一漁業グループ、三保造船所で】
【静岡】国際競争力の強化を図るため、水産庁の試験操業許可により、3隻の海外巻網船の大型化が図られる。これに伴い、漁獲魚の積みトン数が従来船に比べて1.5倍にアップするなどして、より効率的な操業が可能になる。その第一船として、福一漁業㈱グループの太神漁業㈱(いずれも近藤一成社長、本社・静岡県焼津市)の第83福一丸(760トン)が17日、建造を進めている静岡市清水区三保の㈱三保造船所で進水した。
進水式では近藤社長が、新船を「第83福一丸」と命名、出席者の代表が玉串を捧げ、近藤社長の長女・朝葉(ともは)さんが支綱を切断すると、新船はするすると船台を滑り、秋が深まる駿河湾に勇志を浮かべた。代船建造で、被代船は第18太神丸。完成は来年3月の予定。
水産食糧の確保を含めて国際競争力の強化を図ることを目的として、水産庁は小型魚(幼魚メバチ)の混獲回避を検討するために大目網を使用することなどを条件に、海巻船の大型化による試験操業を認め、(3隻を上限に)漁船建造許可を出し、3隻の大型海巻船が来年から再来年にかけて(代船)建造される。第83福一丸はその一番船となる。新大型海巻船は日本丸を土台にした船型で、既存の海巻船349トン(国内トン数)に対して760トンと、ふた回りほど大きくなる。積みトン数は既存船の800トン前後から1200トンへと1.5倍に増える。「外国船の巻網船に比べるとまだ小さい部類で、国際標準船とは言い難い」と関係者は指摘するが、大型海巻船の誕生は日本の漁業の歴史に新たな1ページを加える。
新大型海巻船は球状船首、フラップ舵付き、二層甲板の船首機関型。「既存船と比べて長さは15-16メートル、幅は2メートル、深さは1メートルほど大きくなる」(関係者)。また、従来型のバトックフロー型船尾を採用して、推進効率をアップさせる。主機関は2942キロワット(4000馬力)、600回転の中速エンジンを採用し、大口径プロペラ(5翼固定ピッチ、25度スキュー付き、直径4メートル)を装備。海巻船では初めてプロペラボスキャップフィンを付けて、プロペラ翼によって蹴(け)られてできる渦を消(吸収)して推進効率を高める。
漁労装置ではパースウィンチ、アクティングパワーブロック、アシストローラーなどの能力アップも図りつつ装備し、起倒式パースダビットを採用。将来、素群れ操業の際に魚群探索用の小型ヘリコプターを使えるようにするため、羅針甲板を拡幅してヘリコプターが離発着できるよう、ヘリデッキなどの必要設備を整える。ヘリコプターを活用した操業体制は、日本では初めての試みとなる。付属艇は大伝馬船1艇、中伝馬船2艇。レーダー、魚探をはじめとした最新鋭の航海計器類などを装備する。冷凍機は160キロワット8基を装備して高能力とし、冷媒は環境にやさしいアンモニアを採用。全魚倉22倉でブライン凍結を行う。居住区はILO基準に準拠して、高く広くして居住環境をよくする。船の安全(安定)性も増す。
新船第83福一丸は、中西部太平洋漁場で操業する。船の大型化で漁獲したカツオ、キハダ類の積みトン数が大幅に増えることにより、漁場滞在日数が増える一方で、漁場への年間往復航海日数を削減でき、燃油消費率が低減するなど、より効果的な操業を展開して外国の巻網漁船との国際競争に伍していく。福一漁業グループは海外巻網船5隻、遠洋マグロ船3隻を所有し、カツオマグロを主体とした中で、生産、加工、卸販売、小売などの幅広い事業展開を行っている。
第83福一丸の主要目は次の通り。
全長79.6メートル、登録長73.88メートル、垂線間長70メートル、型幅14メートル、型深さ8.3メートル、喫水5.7メートル、総トン数760トン(国際トン数1788トン)定員27人、速力15.2ノット。


20081119sinsuisiki2.jpg 「世界最高の船に」
諸外国との対抗に期待
【静岡】「第83福一丸」の進水式に続き、進水祝賀会が福一漁業グループの社員、三保造船所や機器メーカーの代表者らが出席して三保造船所で開かれた。
あいさつに立った近藤一成太神漁業㈱社長(福一漁業㈱社長)は、「本船は水産庁の主導のもとに出された大中型巻網漁業の国際競争力強化のための試験操業許可第一号船で、改めて身が引き締まる思いである。(大型化に向けては)多くの宿題、ハードルがあったが、海外まき網漁業協会の島一雄会長をはじめ関係者のご指導、ご協力をいただき、難関を乗り越えて建造にいたり、感謝を申し上げる。来年3月中旬に竣工、引き渡しとなるが、世界最高の漁船にするため、がっちりとスクラムを組んで最終仕上げに邁(まい)進したい」と述べた。
続いて、三澤俊彦㈱三保造船所社長が新船の概要などについて紹介し、外山隆㈱日本政策金融公庫東京支店農林水産事業統括、島㈳海外まき網漁業協会会長が祝辞を述べた。
この中で島会長は、「日本が(海外巻網漁業に)規制をしている間に、韓国、台湾、フィリピン、スペインなど(の巻網船)が漁獲努力量の増大や船の大型化を行ってきた。現在、中西部太平洋だけで二百数十隻の(巻網)船が操業しているが、日本船は35隻でずっと抑えられているのが現状である。諸外国の船ではスペイン、台湾の最新船は2000トン積み、3000トン積みの巨大な船が建造されている。私は諸外国と肩を並べるような船を造るべきだと、6年前の会長就任時から言い続けてきたが、ようやくその願いの一端が実現できた。福一漁業グループは日本一の海外巻網船の所有者で5隻をもち、先頭に立ってこれからの海外巻網漁業を引っ張っていかれる。第83福一丸の新造は日本の海外巻網漁業の歴史の中で、一つの画期的なことである。この試験操業が成功して制度化されて、諸外国と対抗して操業していける体制ができることを期待している」と述べ、大型海巻船の進水を祝福した。 

2008年11月17日 【第八十三福一丸】進水式の模様を静岡新聞で掲載

2008年11月18日

‐掲載全文‐
 sinsuisiki.jpg  国内最大のまき網漁船が静岡市清水区三保の三保造船所で建造されている。カツオ漁が中心の漁船で、大型化が進む海外の漁船に対抗できるよう水産庁が国内で試験的に認めた大型漁船三隻のうちの第一船。総トン数は七六〇トン。発注したのは福一漁業グループの太神漁業(焼津市)で、船名は「第八十三福一丸」。十七日には進水式が行われ、その雄姿が関係者に披露された。
水産庁は、水産資源の枯渇を防ぐ目的などで一定以上の重量の漁船の建造を認めていなかったが、今年五月、海外漁船の大型化への対抗策や国内の食糧確保という観点から、条件付きで最大七六〇トンの漁船建造を認める方針を打ち出した。メバチマグロの混獲を防止するための漁網を使用するのが主な条件で、三隻に限って認めた。三保造船所は福一漁業のほか水産大手のマルハニチロホールディングス、極洋のグループ会社の大型漁船も手掛ける計画で、「第八十三福一丸」はその第一号として建造。全長七十九.六メートル、幅十四メートル、定員二十七人、速力は十五.二ノット。事業費は二十数億円。「カツオやマグロはこれまでの一.五倍の千二百トンは積めるようになる」(同社)という。
水産庁の新方針が示された後、本格的な建造に着手した。今後は艤装(ぎそう)工事に入り、来年三月には引き渡す。進水式では「第八十三福一丸」に大漁旗や紅白幕などが飾られ、船台を滑走して海に浮かぶと、出席者や見物客、従業員から歓声が上がった。